Archive - 11月 2012

様々なパーソナルデータが公開され、自由に分析できる時代がやってくる!? 日本の取り組みとオープンデータ先進国イギリス政府が進める”midata”

midata

あなた自身の日々の購買データやサービス利用データを自由にダウンロードでき、それらを統合し分析できる時代が来るかもしれないとしたら、皆さんはどのように考えますか?

実は、そう遠くない将来に日本でも実現する可能性があるのです。

今月始め、総務省が第1回「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」を開催しました。総務省といえば、7月の「オープンデータ流通推進コンソーシアム」設立や12月に「オープンデータシンポジウム」の開催を予定しているなど、日本のオープンデータ戦略推進を最もリードしている行政機関の一つです。

「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」の目的は、”個人に関する大量の情報が集積・利用されることによる個人情報・プライバシー保護の観点と、保護できた上でのネットワーク上での利用・流通の促進に向けた方策の検討”となっています。

公開されている資料などには、最初に書いたような具体的なことは全く書かれていませんが、”利用・流通”というキーワードから、オープンデータ先進国であるイギリスで進められている”midita initiative”と同様の動きになる可能性もあるのでは!?と思ったわけです。

オープンデータ先進国イギリス政府が進める”midata”とは?

イギリスは、Open Knowledge Foundationなどの民間からの働きかけや政治的リーダーシップにより、欧州の中で最もオープンデータ活用が進んでいる国の一つです。

そもそもオープンデータは、狭義にはオープン化された公共データを意味することもありますが、Open Knowledge Foundationが今年2月に公開したOpen Data Handbookでの”Openの定義”は以下3つになっています。

  • (望ましいのは)インターネット経由でダウンロードでき、再作成に必要以上のコストがかかってはいけない。また、データは使いやすく変更可能な形式であること。
     
  • 他のデータセットと組み合わせての再利用や再配布ができること。
     
  • “誰もが”利用、再利用、再配布ができること。データの使い道、人種、所属団体などで差別をしてはいけない。例えば「非営利目的での利用に限る」という制限や「教育目的での利用に限る」などの制限も許されない。

よって、広義には民間企業が機械識別可能な形式で再利用可能なデータをインターネット経由で公開すれば、それもオープンデータと言えます。

日本での例としては、Excelファイルではありますが博報堂が今年9月にに公開した、生活者意識の定点観測調査「生活定点」データも、完全にではないですがオープンデータと言うことができるのではないでしょうか。

”open by default”のポリシーが根付いているイギリスでは、民間企業保有データのオープン化に関する戦略が国家レベルで検討されています。

イギリスの行政機関の一つであるBIS(Department for Business, Innovation and Skills)は2011年4月、消費者がより良い選択・取引を行えれば長期的に経済が成長するという考えのもと、Consumer Empowerment Strategyを発表し、4つのセクションの一つ「The Power of Information」の中で、消費者が民間企業の持つ各自のデータ(いわゆるパーソナルデータ)に自由にアクセスしコントロールできるようにと”midata“(マイデータと読む)というプロジェクトが発足しました。

要するに、企業はユーザーの情報を分析し購買行動パターンなどを導き出し、そこから最終的に利益を生み出しているのですから、消費者もそのデータに自由にアクセス出来るようになれば最適な消費活動(例えば携帯料金プランの再検討)ができるようになる、ということなのです。

実はイギリスのデータ保護規制では、消費者が企業保有のパーソナルデータへのアクセスを要求する権利が法的に認められていますが、国民の認知率も高くなく法的拘束力も低いのが現状となっています。

midataプロジェクトには民間企業もパートナーとして参加しており、Goolge、クレジットカードのVisaとMasterCard、ガス会社のBritish Gas、電力会社のEDF Energy、保険のLloyds、携帯キャリアのThreeなど様々な業態の企業や組織がこの取り組みをサポートしています

“midata”によってどのような未来がやってくるのか

イギリス最大で世界第3位(ウォルマート、カルフールに次いで)の小売り企業であるTescoは1,600万人もの会員データを持っていますが、その購買データをショッパーデータ分析のdunnhumbyに売って利益を得ている、という記事が書かれました。

実際には、消費者はデータを収集される代わりにポイントやクーポンという形で還元されているわけですが、そのデータはdunnhumbyを通して匿名化された形ではありますがメーカー企業に販売されている事実は確かにあるわけです。

そんな問題も指摘されていたTescoは今年10月、会員が自分の購買データに自由にアクセス出来るように公開するという“Clubcard Play”という計画を発表しました。

詳細はまだ公開されていませんが、ゲーミフィケーションを取り入れたり、メーカー企業とのコミュニケーションが出来るようなメディアにする計画など、データを公開することによって消費者とのエンゲージメントを高める施策を検討しているそうです。このプロジェクトで働く人材も募集しているなど、今後の動きには注目です。

しかしながら、もちろんサイト上で購買データを自由に閲覧できることも大事ですが、イギリス政府が目指しているのは、各民間企業が機械式別可能なデータを”ダウンロード”できれば、それらを統合し消費行動全体を俯瞰し分析することができ、最終的な国民生活の向上と経済の成長なのです。

恐らく個人でこれらのデータを統合・分析することはできないので、第3者(サードパーティ)の分析プラットフォームへのアップロードが必要になるため、セキュリティ保護をどのようにするのか、ということが最大の問題として議論されています。

日本の総務省による「パーソナルデータの利用・流通に関する研究会」での論議の中でも、今後midataの取り組みが登場してくるのではないでしょうか。

イギリス政府はオープンデータを活用したビジネス(いわゆるオープンデータビジネス)を活性化させるための組織であるODI(Open Data Institute)を2011年11月に設立し、今月にはこのmidataを推進するためのハッカソンである”Midata Hackathon 2012“を開催しました。こちらにどのような案が出てきたかの紹介があります。

 

「ライフログ」という言葉を良く聞くようになりましたが、個人で収集可能なデータは限られており、購買データなどを分析可能な形式に変換することは非常に手間であり困難となっています。

もし、それぞれの企業が購買データやサービス利用データなどのパーソナルデータを自由にダウンロードできるように、もしくはAPIという形でデータを取得できるようになれば、”真のライフログ”が完成するのではないでしょうか。

元Yahoo!とFacebookのビッグデータエキスパートによるスタートアップが提供する、ビッグデータアプリ開発プラットフォーム「 Continuuity AppFabric」

Continuuity AppFabric

 

Continuuityは元Yahoo!のクラウド部門VPだったTodd Papaioannou氏と元FacebookでHBaseエンジニアだったJonathan Gray氏によって2011年に創業されたスタートアップで、約1年間の準備を経て先月、Hadoopベースのアプリ開発プラットフォーム(PaaS)である「Continuuity AppFabric」をローンチしました。

私の知る限り、このようなビッグデータアプリ開発のSDK提供からデプロイ、スケーリングまでサポートするサービスはあまり聞いたことがなく、今月14日に1,000万ドルの資金調達を行ったことを各メディアがこぞって記事(GigaOMTechChrunchForbesVentureBeatThe Next Webなど)にしていることから、その期待度の高さ伺えます。

クラウドアプリプラットフォーム(PaaS)と言えばHerokuGoogle App EngineWindows Azureなどありますが、ビッグデータアプリの開発環境は提供していません。

現在、プライベートベータ版として無料でローカル環境で開発できるEclipse プラグインなどのSDK・ツールを提供するDEVELOPER SUITEと、プライベートクラウド上で同じように開発できるPRIVATE CLOUDがリリースされており、2013年にPUBLIC CLOUDがリリースされることになっています。

ローカル環境であるDEVELOPER SUITEで開発したものであっても、ワンクリックで全てのデータがクラウドに移動させることができるようになっているので、試用からの移行がとても容易になっていることも特徴です。

UIもリッチであることが強みとなっているそうで、先月開催されたStrata + Hadoop World 2012でのTodd Papaioannou氏とJonathan Gray氏のインタビューの中で、少しだけですが説明用にデモ画面を見ることができます。

このようなプラットフォームがこれから更に出てくると、開発者が少人数のスタートアップや個人でもビッグデータサービスを立ち上げることができるようになっていくでしょう。

データ分析アプリ開発という視点からですと、データマーケットプレイスからビッグデータプラットフォームに移行してきているInfochimpsに期待しています。

モバイルファーストの次世代リアルタイムデータビジュアライゼーションツール「Zoomdata」がローンチ

Zoomdata

題名だけ見るとカタカナだらけで逆によくわからなくなってしまっていますが、本当にこの題名が示す通り、”モバイルデバイスに最適化され、リアルタイムにストリームデータを可視化できるツール”となっているのが、今回ご紹介する「Zoomdata」です。

11月13日に、このツールのローンチと同時に110万ドルをシードファンディングとして調達したことを発表しました。

インフラとしての仕組みは、オンプレミスの基幹システムやクラウド上のデータ、ソーシャルメディアデータ、HDFS上のデータなどマルチソースのデータを統合し、リアルタイムにストリームデータを可視化・分析が可能となっており、分析結果を他のメンバーに共有するソーシャル機能もあります。

ちなみにGigaOMの記事によると、このリアルタイム分散処理システムは去年9月にTwitterがオープンソース化したStormを活用しているとのことです。

ヒストリカルデータを保持しながら別のリアルタイムのストリームデータを処理できるため、過去とのリアルタイム比較が可能となっています。

Zoomdataの特徴であり強みとなっているのは、パレット上でお絵かきをするようなモバイル端末での直感的な操作感とビジュアライゼーションです。

データ可視化スクリプトとして注目を集めているD3.jsから多くのインスピレーションを受けており、なおかつモバイル端末らしくスワイプやピンチ、ドラッグ&ドロップなどを使い直感的に操作・分析可能で、ユーザーエクスペリエンスを追求したデータ分析ツールとなっています。

残念ながらデモ動画は公開されておらず、実際にはどのように動くのかを見ることが出来ません。その操作感を早く動画で見てみたいですね。

果たしてこのツールが成功するのか・失敗するのかの議論はさておき、近年のBI関連スタートアップ(例えばRoambiandaraなど)は明らかにモバイルファーストもしくはモバイル特化型で機能も絞って特化した企業が増えてきており、これまでムダに高機能で高価なデスクトップ型BIツールに手が出せなかったSMBsをターゲットにしていることがよくわかります。

先月、タッチパネルに最適化されたWindows 8が発売され、モバイルBI市場は更に拡大していくでしょう。ただ単にモバイル端末にデータを表示出来るだけでない付加価値にレガシーBIベンダーがどのように対応してくるのかに注目です。

オンラインとオフラインデータを統合・分析可能な次世代Google Analytics「Universal Analytics」を発表

Universal Analytics

 

先月末に開催されたGoogle Analytics Summit 2012にて、次世代のGoogle Analyticsの革新的な新機能が発表されました。

既にMarkezineが本日公開した記事にて日本語で概要が説明されており、ソーシャルメディア上でも情報が拡散されていることから、その注目度が伺えます。こちらの記事には載っていないその他のスライド画像は、こちらのDigital Marteting Blogの記事を御覧ください。

本日、ビデオリサーチもWebサイトのアクセスログにプロフィールデータを付与する新サービスを発表していますが、正直このUniversal Analyticsの発表によって多少影が薄くなってしまった感は否めないでしょう。

Universal Analyticsの新機能は大きく分けて4つですが、詳細は上記のMarkezineの記事を参照していただくのが良いと思います。

  • Simple Open Measurement Protocol 
  • User ID Control
  • Offline Conversions
  • Dimension Import & Joining

全体を一文で説明すると、以下のようになります。

「PC・モバイル・ゲーム機・テレビ・実店舗など、オンライン・オフライン問わず消費者の全てのタッチポイント(接点)での行動データを一つのユニークIDで紐付けることが可能になり、様々な分析軸からデータ分析が出来るようになる。」

Google Analyticsはこれまで、WebサイトやECサイトの運営者などが主な利用者でしたが、今回の発表により今後デジタルマーケターだけでなく、実店舗のマーケティング担当者にも拡大していくことになります。

このようなツールが増えてくることによって、デジタルマーケティングとアナログマーケティングの部署もしくは担当者が分かれているような企業では、今後連携や統合されていくことになるでしょう。

Universal Analyticsは、まず大手企業からクローズドに試験導入を始め、2013年にオープンβ、正式ローンチしていく予定となっています。

オフラインでの行動からオンライン広告のターゲティングが出来るようになる!?

このUniversal Analiticsによって、オンラインでの行動とオフラインでの行動が統合できるとどのようなマーケティングが出来るようになるのか。その一つシナリオを考えてみました。

Googleは今年の7月に「リマーケティング」機能をGoogle Analyticsに統合しました。この「リマーケティング」機能の仕組みの説明については、Web担当者Forumのこちらの記事が理解しやすいです。

簡単に説明すると、”特定のページに訪れたユーザーを「リスト化」し、リスト化されたユーザーだけを対象に、ディスプレイネットワーク内で広告を表示できるという仕組み”なのですが、このリスト化をオフラインでの行動まで含められたらどうなるでしょう。以下のようなターゲティング広告ができるようになります。

  • 実店舗でシャンプーを購入した消費者に、シャンプーが切れそうなタイミングでオンライン広告を配信し、商品を再想起させる。
  • そのネット広告を見た消費者が、オンラインショップで購入したか、実店舗で購入したかをトラッキングできる。

といった様な、「Offline → Online  → Offline」の行動を一元管理し分析できるようになり、次世代のCRMデータ分析サービスと言えるでしょう。

Googleは今年の5月に開催した「Think with Google-マルチスクリーン時代のマーケティング-」で、オフラインとクロスメディアでの広告・キャンペーン効果測定のプロジェクトである「SSP(シングル・ソース・パネル) Initiative」に関する日本での取り組みを発表しており、今後のGoogleのオフラインを絡めた動向には目を離せません。